新潟県中越地震


10月23日夕方6時数分前、新潟県小千谷市を震源とする中越地震が発生しました。
小千谷市では震度6強の地震が15秒間続き、相次ぐ大きな余震により被害が拡大しました。

起伏のできた道路

道路内の下水管のまわりの砂が地震により液状化し、道路が陥没しています。
この様な光景は何処でも見られました。
飛び出したマンホール

はじめは歩道にボラードか何かが置いてあると思ったのが、 路面から120センチ程飛び出したマンホールでした。

23日の第一回の縦揺れにより、マンホールが上に突き上げられたようです。
その後の相次ぐ横揺れにより横管のまわりの砂が液状化を起こし、マンホールのあった場所に移動し、 路面の陥没に至ったようです。

傾いた電柱

電信柱も、はじめの縦揺れによって突き上げられ、 相次ぐ余震により、揺らされて傾いたようです。
本屋がずれた高床住宅

一回目の縦揺れにより、瓦を葺いた本屋ごと上に突き上げられ、 2階の柱と縁が切れ、相次ぐ横揺れにより屋根が1m程右に振られたようです。

軒桁の継ぎ手は伝統的な継ぎ方ではなく、「カマ継ぎ」となっていたので、 桁が外れやすく、 柱も「短ほぞ」で桁を化粧とする為、V金物で接合していなかったのが命取りとなったようです。
長ほぞ差し+込み栓打ちとすればよかったのかも知れません。

「中引き」も用いていないようで、中引きと梁を交互に上下に交差させる事で、縦揺れにそなえることができます。
伝統構法では、難しい梁と中引きの交差を、根曲がり材を使用することで実現していました。

無事だった建物

同じ高床式の住宅で本屋が瓦屋根でも、異常のない建物もあります。
「中引き」が設けられていた建物で、おそらく梁は丸梁で、中引きと直行しているようです。

このように施工(木組み)をちゃんとしてやれば、崩壊せずに済んでいます。
表面だけを真似するのではなく、伝統構法をよく理解した上で建てなければ意味がありません。

無事だったM邸

多くの建物が崩壊しているなか、M邸は無事に姿を保っていました。
ガレージ

ガレージの木組みはしっかりとしていました。
独立基礎に固定された柱と土台もほとんどズレていません。
通し貫(ぬき)

通し貫の栓も緩んでいませんでした。
上の下屋が狂っていなかったので、壁として十分な役割を果たしていたようです。

この通し貫にこまいを組んで、土塗り壁を施工すれば、耐火性能もでてきます。
築40年くらいで、土塗り壁に瓦屋根の建物が倒壊していましたが、伝統工法に精通していない設計士やシロウトが見ると、

   「土塗り壁+瓦は地震に弱い」

と、直ぐに誤解してしまいますが、40年位前の建物は、通し貫で施工していなかったようで、
(通し貫といっても18ミリくらいの普通の貫では役には立たないです。30ミリ以上は必要。)

   伝統工法でなかったから倒れるのは当たり前

というのが、私の考えです。
実際、小千谷周辺の80年以上経った伝統的な家は崩壊に至っていません。

和室

和室では、積んであったグラスウールが転がっていました。
確かに地震があったようです。
それ以外は異常は見当たりません。

居間

居間の床に、立ててあった脚立が転倒していました。
材料も崩れています。
大黒柱

居間の大黒柱に刺さる横架材の仕口は全く無傷で、くさびや栓も寸分も動いていないようです。
樹齢300年の大黒柱がこの家を守ってくれたのでしょうか?
台所

脚立が倒れています。
それ以外は地震の前と同じです。
台所の天井

天井の木組みはまったく狂っていません。
合わせ目もスキがありません。

和室を取り囲むサシ構造から四方に伸びる梁組みがガッチリと家を守っています。

割れたガラス

階段室の出窓のガラスが足場に当り、割れています。
建物は丈夫でしたが、足場は踊っていたようです。
下屋

下屋の上に設置した足場も何度か揺れて、屋根のカラーステンレス鋼板を傷めてしまいました。
外壁を収める前に貼りなおす必要があります。
小屋組み

小屋の木組みは全く異常がありません。
ズレたボード

横積みされていたボードが30センチほど横にズレています。
相次ぐ横揺れによってかなりの重量があるボードが動かされたのです。
小千谷市総合体育館

窓から見た総合体育館です。
全国的に有名になってしまいましたが、この中で避難されている方々が生活しています。

地震の前はほとんど車が止まっていなかった駐車場が満杯です。
早く地震が沈静化し、普通の生活に戻りたいところですが・・


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